紺野が春樹の胸元を腕で組み敷いた。甲板に引き倒し、前髪もろとも右手でまだ幼さが垣間見える滑らかな額を押さえつける。 「速度変化による目の錯覚なんかに引っ掛かってちゃダメでしょ?」 「…っう……!」 ぎり、と歯を食い縛る表情は読めない。 「……君が単身ここに来たのは、慢心?それとも陽動?」 やわらかく微笑む紺野だったが、額には玉の汗を浮かべていた。 春樹は頑なに口を割らない。 空が灰がかったように くすみ始めていた。