部屋を見渡す。 特に散らかってもいない、整頓された部屋。だが、飲みかけのペットボトルやダンベル…生活感を感じさせる物も点在していた。 「紅茶でいいか?」 安原がキッチンから顔を出した。 すばるが返事を返す声が裏返る。それに応えるように安原は微笑み、また影に隠れた。 かちゃかちゃと陶器が擦りあう音だけが部屋に響いている。 ハンガーにかけてある、普段はあまり見ない私服。 焦げ茶色のレザージャケットがはじめて会う人のように見えて、すばるは思わず姿勢を正した。