「計算外でしたよ、アナタのおかげでこの船を沈めるのには時間がかかりそうだ」


春樹レイの鈴を振ったような声には、まだ幼さが残る。


“とばり”の甲板はヘリや戦闘機の離着陸が可能な為、広くとられているものの、いつ戦闘が始まっても良いように塹壕が築かれていた。


「俺もさ、春樹レイ君」
答えた美麗の君――紺野利樹はにっこりと笑ってその青年を呼ぶ。



「こんな所で君に会えるとはね」

言いながら、ウェーブのかかった前髪をさっとかきあげた。









2人のそのやりとりは優雅かつ閑静、だが全くスキが無い。








時は僅かに10分前。


1人の新人海機隊員が通信室の前で伏している隊員を発見したのがハジマリだった。