父は大工だった。
“市民を守る為”の戦闘に巻き込まれて死んだ。
母は花屋を営むのが夢だった。
国の生活補助金の少なさから生活苦に耐えかね、自ら首を吊った。
高校生になったばかりの兄が児童保護施設を出て、国と市民を守る為の組織へ向かったのはそれからすぐのことだった。
――……兄さん
『俺、強くなりてぇんだ』
――…行かないで、
『今すぐに、力が欲しい』
―――……行かないで兄さん!
父さんを殺した組織。
母さんを殺した国。
兄さんがそこに行ったと知った時の僕は、「おかしかった」。自分でも、自分が狂っているとわかるほどに。
僕は兄を…あの男を許さない。
奴は許されないのだ。