同じ頃、《トリカゴ》沿岸。 既に何機かの敵機を撃墜した特務隊だが、相手の数が一向に減少しないことを安原葵はひとり訝しんでいた。 「……どこから、そんな」 呟いて旋回する。とりあえず一区切りついたものの、自軍にも少なからず損傷があった。 紫色の朝靄にキラキラと輝く光が眩しい。 上空から《トリカゴ》を見れば、至るところに戦闘の爪痕が残存していた。 黒い煙の根元には、まるで岩礁のようにコンクリートがぐしゃぐしゃに眠っている。 ひとつ、ふたつ…… 数をかぞえる指が一点で止まる。