ごくんと息を呑み、一息に少女が敷居を飛び越えた。 ゆっくりと、足で大地を掴む。 何も言わずたちすくむ少女の頬を涙の粒が柔らかく伝った。 少女も、しんごも、 黙ったまま互いを見つめていた。 すでに橙色は遠くへと去り、窓から差し込む満月のあかりが少女の頬を照らしている。 しんごの頬が優しく緩んだことに応えるように、少女が涙する。 堰を切ってこぼれる涙を拭いもせず、口を開いた。