「そんな暗いとこに居たらダメになっちまうっ……だから、」 一番言いたかった帰る当ての無い言葉が少女の喉の奥で優しく消滅していった。 「だから、帰ってこい」 しんごは真っ直ぐ、ゆっくりと少女に伝えた。 今思えば、どうしてあの時、あの人があんなにも必死になっていたのかわかる気がした。 去った家族に“おかえり”が言えない哀しみは、彼が一番わかっていたのだと今ならわかる。