「わかんない…」
「そうかよ…!」
ぱ、と立ち上がったしんごに気を取られ、少女はこてんと倒れこんでしまった。
「ひゃ…」
自分の手首をぐっと掴む手は果てなく大きく、酷く厳しく思えた。軽々と自分の身体が浮き上がる。
少年に抱きかかえられたことに気づいたのは、広がった世界に叩き落されてからだった。
「……あ……あ、あ」
真っ直ぐに広がる廊下で、少女は気が狂ったかのように声にならない声を発する。
ただ一つ、少女の生への渇望を繋いだ“約束”。
それが、たった3秒で。
「やだああああっ!!!」
少女が泣き叫ぶ。地面に這いつくばったまま、ひたすら叫んでいた。
もう、“おかえり”をいえない……


