「もう、おじいさまは帰ってこないの?」 その時しんごが知っていたのは、御堂弥三郎長官の死亡、のみ。 それでもきっと、この少女にはその事実をも認めないほどの大きな苦痛だったのだろう、とは思っていた。 “おじいさま”の、死。 「そうなるんじゃねえか」 隠すことも、はぐらかすこともせずに。しんごはそう言い切った。 「…そう」 筆の一振りほどの空に残るオレンジが段々と闇に溶ける。 「お前はどうするんだ」