「しんご」 少年の口から空気中に、ぽいと吐き出されたその三文字を理解するのに、少し時間がかかった。 「しんご…」 少女が繰り返す。 「それがヒーローの正体ってことだ」 くしゅん、とくしゃみ。 今度は少女のもの。 「まだ、待つのか?」 それに反応したように尋ねた若草色…――しんご、は少女にもう一度同じ質問をする。 「待つもん」 オレンジ色が飲み込まれていく。 「しんごは、いつまでそうしてるの?」