「皆瀬、」 安原の声が夜空に吸い込まれる。 普段なら、何故だかこの声に弱くて俯いてしまうのだが、いま下を向けば涙がこぼれてしまいそうだった。すばるは安原の後方を見透かすようにして前を向く。 「…っ……」 安原は目に見えたすばるの力の込めように優しく微笑んで、揺らぐその瞳を真っ直ぐに捉えた。 「『泣くことは悪い事だ』、などと誰が言った?」