「ここにいろ、皆瀬」 「……ふえ?」 すばるは、少し首をかしげて安原を見た。目線がぐっと自分を射抜く。 「どこにも行くな」 いつの間にか、漆黒の夜空に点々と星霜。金の帯を翻す月が安原の背を照らしていた。 「隊長隊長っ」 とんとん、とまるで踊るかのように地面を爪先でつつく、すばるの癖。 「あたし、ここにいますよ」 その微笑みは、まるで何かを悟った女神のようだった。 秀麗、優雅、清廉にして、どこか妖艶で。 かと思えば、言い切ったすばるの目にうつる白い月が揺らいで。