「もう着替えてしまったのか」
似合っていたのに、と安原が頬の筋肉を緩めた。途端に顔を真っ赤にして俯くすばるを見て、またくつくつと笑いだす。
「そんなに照れなくてもいいだろう、皆瀬隊員」
「な、なにを、」
「顔が真っ赤だ」
安原の大きな手がすばるの頭をぽふぽふと撫でた。
「……そそ、そんなことよりっ。お話聞きに来たんですよう!」
すばるにしては上手く話を切り替えたな、などと安原は思ってみたが口には出さない。
「はは、そうだったな」
答えて歩き始める。
話があるから俺の元へ来い、と人伝いに言ったのは安原だった。
安原の背を追ってすばるも歩く。
角を曲がれば建物の端に位置したアルミ製の扉を捉えた。
「(……!)」
すばるはドアノブを包むその手にすら、視線をやってしまう。何故だろう、とは思う。
「何をやってる?皆瀬」
「は、はい!」
すたすたと歩く安原の後ろを、少し早歩きに追う。


