「御堂長官」 安原葵の凛とした声は波打って部屋に響いた。 「………なぁに、安原」 御堂香織は振り向かずに答える。書類がめくれるぱらぱらといった乾いた音だけが連続的に聞こえる。 「───俺は、事業規格2項8条を侵犯しました」 2項8条 「陽性(+)」に事業について公表すること、これを認めない