ゆっくりと、安原の手がすばるの頭部に触れた。前を向いたままで、すばるはうつむいたまま安原を見ようとはしない。
「原隊長に礼は言ったか?」
こくん、と頷いて、すばるはまた下を向いた。
「……良い子だ」
安原も、すばるを撫でながらそれ以上の言葉を言おうとはしない。
優しい声は安原隊長のもの。頭を撫でてくれる人のもの。
すばるは内心、実感して頬を赤く染める。
***
いつも嬉しくてどきどきしちゃうけど、それ以上に───
あたしに隊長の手が触れることで、あたしの存在を認められたような気がしたんだ。
安原隊長の手は、おっきくて、ごつごつで、すごく優しい。
「ここにいる、それだけで十分」
原さんの言葉が、今ならわかるとあたしは思った。


