「起きろ馬鹿!」

「……ん……」

 翌朝、罵声に起こされた。彼女のことでの興奮も、父王の訳の分からない言動で消え去り、床についたのである。

「随分と余裕ですなぁ、王太子様」

 神官服――いつものものではなく畏まった儀式用のものだ――に身を包んだディオだった。

「何だその格好……」
「お・ま・え・だ・ろ」

 凄んでから事態を全く理解していないジョシアに怪訝な顔をし、

「お前……まさか知らないのか?」
「何を?」

「そうか……陛下か」

 一人納得し、次に紙切れを出した。

「夜中、これに叩き起こされた」

 ジョシアは羊皮紙を受け取り目を通す――最中に顔を引きつらせた。

「確かに、考えれば変だったかもな。お前が希望しても陛下がお許しにならなければこんな王命出ないしな。そう考えれば、この王命の大元はお前じゃないな。そもそも……」

「……本気だった……のか……」

 羊皮紙――国王からレクセア家に送られた王命状――を震える手で握り締め、ジョシアは眩暈を感じていた。

 昨夜、母の命日に結婚しろと言っていた父の言葉、あれは冗談でも比喩でもなかったのだ。

 王命状には今日の午前中に婚約の儀とある。

「……今日の儀式は俺が務める。父様は婚礼の儀の準備で夜中から大忙しだしな。

 これが手順……おっと、こっちを先に見せないとな」

 そこにはジョシアが王に願い出たとされる内容が書かれてあった。無論、願い出るどころか考えてもいなかったのだから全て父親のでっちあげだが。

 ざっと目を通し異論はなかった。彼女の守護花は彼と同じくリーリアントとする。彼女には王妃の称号のみを与え、女王への即位は考えない。

 まぁ、息子のことを理解している証拠だと思うことにした。