「もぉっ!道也の馬鹿っ」 梓に背を向けて歩きだすと、いつもの様に怒鳴り声が聞こえてくる。 その声にいつもと同じ様に苦笑する。 オレらの痴話喧嘩にはもう周りも慣れているのか、梓とオレが騒いでいても誰も気にしなくなっている。 オレだって梓が好きだから一緒にいてやりたい。 でも、どうしても虎狼を1人にしておきたくないんだ。 何でわかってくれないんだろうなー。 誰より脆い虎狼を〈独り〉にしたくないって気持ちを。 オレは振り返ることなく、虎狼の家に向かった。 *