春が来るまで…

僕たちはコートを着て、手袋をはめ、マフラーを巻いて北風が吹き始めた帰り道を歩いた。




手袋越しの喜美の手は、何故か遠く感じ、僕は少し寂しくなる。




この寂しさは、きっと秋のせい。




喜美も『なんだか切ないね…』と寂しそうに呟いた。




秋は寂しい。




枯れ葉が舞い、ヒューヒューと木枯らしの音がする。




秋は少し切ない。




僕たちは公園のベンチで肩を寄せ合い、寂しさを紛らわせながら話をした。