近未来の夏。
しかし現代と代わり映えのない未来。学生の間では夏休みが始まっている。
「やってらんねぇ…。」
鬱蒼とした草々に囲まれた庭の中央で一人の少年が怒鳴った。
「うるさい!静かにせんか!!博!!」
博「だってよ、じぃちゃん。この雑草、俺一人で抜けって!?この広い庭を!?」
博と呼ばれた少年は自分の身長の半分もないような祖父にむかって叫んだ。
「ジャンケンで負けたお前が悪い。試験が終わったばかりで体もなまっているじゃろう?」
博「じぃちゃん…俺これからやらなきゃいけないことが‥」
「どーせまた山登りじゃろう?準備運動と思って取り組め。」
そう言って祖父は小さな体に似合わないくらい豪快に笑いながら博を置き去りに裏口にむかった。
「ぁーあ…面倒くせーなー…」
博は呟くと草をブチっと抜き始めた。
啓桜博は家から近い祖父の家に遊びに来ていた。祖父は割りと名の知れた「千波矢稲荷大社」を管理するしている。そのすぐ裏手には高い山がそびえている。博はその山を登るつもりで来たのだ。
「登山に来たのに…何で…こんなこと…しなきゃ…いけねーんだ!」
言葉切れ切れに草を抜いていく。