すうっと意識が覚醒するのを感じた。
それに従いゆっくりと目を開けば、先ほどの出来事がすべて夢であった安心感から溜息がもれた。
なんだったんだろう、あの夢は。
そう思うのと同じくらいに、あれが夢でよかったと思っている自分がいた。
知らないはずの男性の気持ち、それが痛いほどわかって。
心臓が無造作に握られたような、そんな残酷な痛みが胸を襲ったのだ。
そうやって夢の出来事に思いを馳せていた私は、次の瞬間、息の止まるほどに驚くことになる。
「どこ、なの・・・ここは・・・」
見覚えのない、空間。
そこに私は寝かされていた。
部屋だとか、そんな生ぬるい広さではない。
どちらかと言えば野外を連想させるほど、異常な広さが前後左右に存在している。
しかも、この空間には一切の色が存在していない。
私が寝ているこのベッドも、その横のサイドテーブルも、床も、天井までが白く染められているのだ。
気づくが早いか、勢いよく起こした体には見覚えのない、やはり白のワンピース。
ぞくりと背筋を冷たいものがなぞった。
気味が悪い。
逃げ出すようにベッドを降りた私はただ逃げるように足を動かした。
床を踏む足の裏は、じんわりと冷えてゆく。
ここはどこか、どうしてここにいるのか、そんなことはどうてもよくて。
私の頭の中には”逃げなきゃ”と言うことだけ。
出口を探すことしか考えられなかった。

