敦子は空を仰いだ。


突き抜けるほどの青空に敦子は微笑んで、京香との会話を録音した携帯電話を大切にポケットにしまった。


「どうしたら効果的にみんなに報せられるかしら……?」


これから、なかなか会社を辞めようとしない敦子に、京香は苛立ちを覚えるだろう。


京香は聡に近付きながら、敦子を孤独へと追い詰めるだろう。


好都合だ、と敦子は思う。


京香が心から聡を愛した時……そう、あの日の結衣のように。



昔のわたしのように。


その余裕のない時こそ人は脆くなる。


わたしはただ、『その時』を待てばいいのだ。