「嫌!嫌よ聡、お願い……」 いつも物分かりのいい敦子。 そんな敦子の反論に、聡は少し驚いて振り返る。 「……敦子を幸せにしてやれなくてごめんな」 「……わたしは幸せよ。聡と出会えて、とても幸せよ」 聡の背中が敦子の涙で揺れる。 聡は今まで見たこともない弱々しい昔の恋人の姿に胸が痛んだ。 「……嫌いになって別れた訳じゃない。これっきり、なんてとても辛いわ」 「敦子……」 ・