敦子の部屋の中。


自分の荷物を整理している聡の背中を、敦子はぼんやりと眺めていた。


くつろぐ時に着ていた服。


読み掛けの本やお気に入りのCD。


一つ一つ、カバンの中に聡が入れる度、当たり前のようにそこにあったこの部屋の景色が変わってゆく。


聡がいなくなることを改めて感じて、敦子は怖くなる。


「……行かないで」


敦子は聡の背中にすがりついた。



「敦子のためにも、こうすることが1番いいんだ」


敦子は愛する男の声を背中越しに聞いた時、


『手を離したらこれで終わりだ』


そんな予感に襲われた。