「敦子、元気出して……?」


毎日のように訪ねて来てくれる京香。


「……ありがとう」


元気なんて、出る訳がない。


まだ愛に濡れた瞳で、慰めてくれる女友達の顔をゆっくりと見た。


「……あの娘の具合は、どう?」


あの娘を見舞う聡は、どうしてる?


邪魔者のわたしが居なくなって、二人は幸せになったのかしら?


聞きたい言葉を敦子は飲み込みながら、京香の答えを待った。


「……大丈夫よ。明日には退院出来るみたい」


京香は言葉を続ける。


「あんなことがあって、結衣ちゃんは会社を辞めたわ。そして……」


「そして?」


「聡さんのマンションで、一緒に暮らすそうよ」


「そう……」


足元からどろどろとした闇の中へ沈んでいく自分を確かに感じながら、敦子は静かに瞳を閉じた。