「ねぇ、『山瀬 結衣』って、どの娘?」


恋人の『気になる娘』が同じ会社の総務課だということを知った敦子は、次の日のお昼休み、その『山瀬 結衣』と同じ総務課にいる同期で仲の良い京香を職員食堂に誘い、尋ねた。


「なによ、いきなり?それにしてもどうしたのよ、珍しいわね。今日は相馬くんと一緒にお昼しないの?」


「うん、ちょっとね……」


ピンと来たように京香は言った。


「なるほど。『山瀬 結衣』ね。営業部のホープ、相馬くんも彼女に落ちちゃったの!?」


「相馬くん『も』って何よ?」


訝しそうに敦子は京香を見て言った。


「ねぇ、いったい『山瀬 結衣』ってどんな……」


「あ、来たわよ。あの子が『山瀬 結衣』よ」


条件反射のように敦子は京香の目線の先を追いかけた。