母さんの家は築50年の一軒家。



かなり古い建物で、何時
屋根が落ちてくるか分かったものじゃない。




唯歌が縁側に座りながら言う。


『おばあちゃん、クロは?』



『クロなら、近所の家に遊びに行ったよ。』




クロ……
懐かしいな。



クロは私が拾ってきた犬の名前。





すると、智子が
こそっと耳打ちした。


『姉ちゃん、涙さんが亡くなってから何年目?』


私は智子が突然そんな事を聞く事に驚きながら


『……、5年目。
この前、誕生日だった。』



『早いね。』






智子の『早いね』は、私にとっては長く長く
悲痛なものだったのだが。