それでもHARUは私に怪訝な顔一つせず、私をまっすぐ見据えて


「お前が歌うんだ。」


そう言ったあとすぐにクールでどこか冷めた視線を向けてきた。


「………??


えっ~~~。」


私は理解するのに数秒かかり、その後はお決まりの反応を素っ頓狂な声で上げた。


後ろに控えていた真智子さんは、私に向かって


「よかったじゃない。菜々。これであなたの夢が叶うわよ!!」


なんてとても甲高い声で、それはそれは嬉しそうに言って駆け寄ってきた。


受け入れられない私を置いてきぼりにして真智子さんはHARUに対して


『ありがとうございます。』や


『打ち合わせの日にちですが…』


と事務的な作業を次々と進めようとしている。