「いってきます」

次の日、京は笑顔で家を出た。その目は生き生きしていて、目の下にあったくまは、綺麗さっぱりなくなっていた。

「おーい! 京!」

「おう! 翔太!」

京に話しかけてきた翔太と呼ばれる男生徒。髪を少し茶色に染めていて、耳にピアスの穴を開けている。見た目はまるで不良のようだが、京の親友でいい奴である。

「何だ何だ? 今日はご機嫌じゃねーか。良いことでもあったのかよ」

「ちょっとな……」

「まぁ機嫌がなおってよかったよ。昨日までのお前はどんよりしていて近寄るのも大変だったし……」

「そこまで言うか?」

「とにかく大変だったんだよ」

翔太は笑いながら京に話をする。
「これで見た目が普通ならかなりモテていただろう」と京は何回思ったことだろうか。
翔太はそれぐらいかっこいいのだ。

「そういえばお前、今日はサッカーに来るよな?」

「え?」

「え? じゃねーよ。お前、ここ何日間も部室に顔を出さねーじゃねーか」

「いや……俺もうサッカー部辞めたんだけど……」

「は? なぜだ?」

「それは……言えない……」

京は下をうつむくしかできなかった。
みんなに本当のことを言いたくないのだ。
特にかなり心配性な加奈には口を割っても言えないことである。