｢……京……｣

｢な……｣


バチン！


屋上にすごい音が響きわたる。京の左頬は赤くなっていて、その前にいる加奈は目に涙をたくさんためていた。

｢何で嘘をつく必要があるのよ!?｣

｢……｣

加奈の言葉に京は何も答えない。その左頬は痛く腫れているのに、京は表情一つ変えず加奈を見る。
その目は悲しみで淀んでいるわけでもなく、嬉しさで輝いているわけでもなく、ただ冷たく加奈を見ていた。

｢本当のことを言ってよ！｣

加奈は耐えきれなかったのか、大粒の涙を流しながら聞いてくる。
だが京はあくまで冷たく、ただ純粋に自分の言葉を発した。

｢悪い……言えない……｣

｢ッ!? ……もういい！｣

加奈はそれだけを言い、京を一人残して屋上から出ていく。
京はその後ろ姿を見ながら、小さく｢すまない……｣とつぶやいた……。