地元に戻る気にもならなかった俺は、暫くヨウスケのマンションで世話になった後、古いアパートを借りた。

木造の寂れた佇まいだが、駅から然程離れておらず交通の便がいい。


アパートの手配は全て堅二さんが施してくれた。


さらに、仕事まで…


自分自身、決してヤクザになったつもりはないのだが、堅二さんの下で『みかじめ集金』の仕事を手伝っている。


みかじめ料とは簡単に言うと『守り料』の事で、江藤会のシマのスナックや風俗店から、客とのトラブルを処理することなどを条件に、カネを出させるというもの。

堅二さんは仕事に対して非常に厳しい性格だった。

それだけに罵声を浴びせられる事も数えきれない程あるが、仕事の進め方はもちろんのこと報告の仕方や敬語の使い方、社会の事に至るまであらゆる事を、堅二さんはひとつひとつ親切丁寧に教えてくれた。


元来几帳面な俺の性格が功を奏し、堅二さんからは仕事のできる男として高い評価をもらっていた。


そして俺は次第に堅二さんを本当のアニキのように慕うようになっていった。