「ここだよ。」

俺はロン毛に連れられて、アパートの一室の前に来た。


「ヤってる最中かもな…」

ロン毛が俺の方を見てニヤっと口角を上げた。


表札の無い、古びたドア。

格子の付いた小窓の磨りガラスには、綺麗に整頓された鍋が影を落としている。


「カッちゃん。いる?」

ロン毛が小窓の隙間から中を覗き込んだ。



カツノリは、突然来た俺にどんな反応をするのだろうか…

アイツの事だ。
『何しに来たんだ?』みたいな感じで、すっとんきょうな顔をするに違いない。

カツノリの表情を想像しただけで、思わず笑いが込み上げてくる。


ぶん殴ってやるという、当初の目的はすっかり忘れてしまっていた。

それよりも早くカツノリに会いたかった。