ゆっくりと流れる雲。
秋の高い空を見上げて、昨日部屋を出て行ったケンジの姿を思い浮かべた。
ケンジ…
中途半端な付き合いだっただけに、
これで最後だとは信じ堅い。
「リサ。俺はお前を変な事に巻き込んでしまったようだ。すまなかった。」
ケンジはそう言って、大きなボストンバッグを両方の肩に掛けると、痛そうに顔を歪めた。
「大丈夫?」
「ああ、このくらいなんて事ねえよ。あんな蹴りくらい屁でもねえって」
私の頭に軽く当てられたケンジの手が、私の髪を優しくなぞった。
本当に見栄っ張りなんだから…
ここに来るときはひとつだったバッグ。
二つに増えているバッグに視線を移す。
「海外にでも逃亡するつもり?」
私がそう言うと、ケンジは優しくはにかんだ。
思わず胸がキュンとなる。
私はこの笑顔に翻弄されてきたんだ…
「そうだな。お前が一緒ならそれもいいかも知れないが、まだやらなきゃいけない事がありすぎる。しばらくはシュウイチさんの言いなりだな…」
二人の曖昧な関係は意外にもあっさりと終わりを迎えた。
でもこれで良かった。
ケンジの事を知れば知るほど、干渉しない事なんて出来ないから…



