本当はもう、リサとは会わないつもりだった。


しっかりした会社で働いている無垢な女を、今の俺の状態に踏み込ませる訳にはいかない。


俺との係わりを持たせる事で、リサを危険に晒す可能性も否めないのだ。


きっと巻き込んでしまう事になる…




しかし、そんな気持ちとは裏腹に、俺は心のどこかでリサから電話が掛かって来るのを待っていたのだ。


俺は卑怯だ…



考える事と感情が一致しない。



いつからこんなに優柔不断になってしまったんだろう…



俺は路地を抜けて、リサとの待ち合わせ場所に向かった。

天気のいい日はリハビリも兼ねて、なるべく歩くように心がけている。

しかし、今日は特別に暑い。

少し歩いただけで額には汗が滲み出ていた。