「堅二…斧を湖に落とした木こりの話知っとるか?」


「…はい」

「あの話はな、自分の落とした斧を正直に伝えた木こりが、金と銀の斧をもらうっちゅう話や。

でも、木こりはホンマに金と銀の斧が欲しかったんやろか?」


「はあ…」

俺はシュウイチさんが言いたいことが分からず、困惑した返事をした。


「あの話には裏があってな…」

シュウイチさんがニヤッとして身を乗り出した。


「金と銀の斧には黒魔術が掛けられてあった。

その金と銀の斧は、木こりが寝ている間に密かに枕元まで移動した後、木こりの首を跳ね飛ばしたんや」


シュウイチさんは片手で耳たぶを触りながら、既に消えているタバコを灰皿でもみ消している。






「正直に話す事は悪い事ちゃう。

ただ、自分の想いのが込もった斧を引き渡した代償がこれや…」