いちごサーガ

ＴＶをつけると俺は絶句した（ここ２、３日絶句してばかりな気がするが気のせいだろうか？）。
あまりの異常さに絶句していたが、しばらく後にようやく状況を理解できた。

「いちご・・・？いちごの逆襲かっ！！」

天気予報では「全国的にいちごです。てへっ」と言っていた。
ニュース番組ではいちご王国の特集番組が組まれ、いちごで有名などこぞやの県の知事がいちご大使に任命されたと言っていた。
通信販売の番組ではいちごばかりが商品にならび、アニメ番組は放送を延期し、変わりに「いちごフルパワー☆」とかいう一昔前ジャ○プで連載されていたアニメがなぜか再放送されていた。

なんだ・・・なにが起こっているんだ！？この数日間で、世界はいちご色に染まってしまったというのかっ！！

いたたまれなくなって、突然俺は窓の外を見、そしてまた絶句した。

外はいちごの雨が降っていた。おかげで地面はつぶれたいちごが乱在していた。洗濯物を干した日には、それが乾かないばかりではなく、いちごの染みができてしまうだろう。

異常な天候に、俺が唖然としている間もニュースはまだ流れていた。もちろんいちごばかりトリビュートされながら・・・。

初めて見る大量のいちごを前に、ため息と興奮とが入り混じった微妙な気持ちになり、ぼーっとそれを見ているしかなかった。

「はは・・・いちご。いちご？はは・・いちごが降ってら…笑える・・・はは」
俺はもはやこの状況を前に平静を保つことは難しくなっていた。傍から見たら、あのいちご女よりも変なやつだっただろう。いや、それは言いすぎか。

ぷるるる…ぷるるる

そんな折、ふと携帯が鳴り始めた。画面には、「非通知設定」と書かれていた。
俺は平静を気取って思い切って通話を押した。
「もしもし」
電話の相手は、見知らぬ男だった。