「関西の人ですか?」

「いや、俺福岡の人やで。」

「でもなんか関西弁っぽいカンジがする。」

「あ、それは俺が大学ん頃にあっちの方やったけんやろな。盛岡の人?」

「一応・・・そうです。でも、私小さい頃から父の都合で色々住んでた場所変わってて。あっ、でも生まれてから小学校までは盛岡ですよ。」

「へぇ、そっか。色んなところて福岡はあると?」

「福岡はないよ。最初が盛岡で、中学校の頃が山形と大阪。」

「ふーん。で、また盛岡に戻ってきたんや?」

「うん。高校からまたこっちで過ごしてる。」

「大変やったやろう?」

「うん。まぁ、でも慣れてたから。あ、あと一週間だけど香川にいた。丸亀市。」

「そっか。」

自然なほどスムーズに会話が流れた。

「うーんと、・・・。」

「貸してみ。」

話をしながら上着を脱いでどこに置こうか周囲を見渡していると、掛けていた上着をハンガーから外し、私のを掛けてくれた。

「あっ、でもそのコート・・・。」

「いいよ、俺のはここら辺においとけば。」

「・・・。」

そう言ってその人は自分のコートを四つにたたんで、床の上に口をあけているバックの上に置いた。

「あのっ、・・・ありがとう。」

「いいって!」

そう言ってその人はにっこりほほ笑んだ。
407号室の扉が開いた瞬間からそうだったが、後で思い返してみると私は無意識のうちにその人の言葉一つ一つや、仕草を鮮明に記憶していた。