私の左肩とその人の右肩が触れている。
少し照れを感じた。

これまで仕事の上での接触だと割り切っていたのだが、その時は心がリラックスしていたせいか敏感に感じた。

「テレビ消してもいい?」

「うん。」

オレンジ色のぼんやりとした明かりだけの部屋。その空間には私と今日初めて会った男の人。私は左側に顔を向け、その人の顔を見つめた。いつもなら自分からそんな行動には出ない。

ただ、この時だけは自然とそうなった。

「ねぇ、瞳大きいよね。」

「あー、よく言われる。けど、そんなに大きいか?」

「うん。部屋のドアが開いた時から思ってた。瞳が大きいなぁって。」

「そっか。」

「パッチリしてる。」

「女の子だってすごい瞳大きい人たくさんおるやん。」

「でもそれは化粧でしょ。」

「ん・・・。」

「化粧するとわからないからなぁ。私でも女の人って化粧すると顔かわるなぁ、って思うもん。」

「そうなんや。でも君も瞳大きいで。かわいい瞳しとるよ。」

「・・・。そう?」

私はいつも鏡を見ているから自分の瞳の大きさはわかってたけど、お世辞でもその人に言われたことがこそばゆかった。

すぐ隣にいるその人の方に今度は体ごと向けた。するとその人も体を横にし、私の右瞳の少し下を指でなぞるようにしてにっこりほほ笑んだ。

「うん、かわいい瞳やね。」

「へへっ、ありがとう。」

素で笑っていた。いつぶりだろうか。
この仕事を始めてからというもの、どんどん男性に対する不信は募るばかり。最初はどんなに優しい顔をしていても、結局はいつもの性欲だけを求める顔になる。

私はあの時に受けた性的暴行以来、男性不信に陥っていた。   

男と言う生き物は結局はそういうもの。

そう決めつけて今まで生きてきた。