「とってあげよっか?」

「えっ、・・・自分でやります。」

突然の積極性に要求を拒んだ。
するとその人は言った。

「自分で服脱ぐのは娼婦だけだよ。」

「私、風俗嬢だけど・・・。」

認めたくないけど、現実はそうだ。
私は男の欲望を体で満たして、金をもらう風俗嬢。客の性欲だけを満たしてあげればそれでいいのだ。

「そうかなぁ・・・。でも、俺が見てきた娼婦とは、なんか違う。」

「・・・。」

「普通の女の子に見えるけど。」

「・・・。これも仕事ですから。」

とっさにそう言って、その会話を終わらせた。その人はちょっと残念そうだったけど、これでいいのだ。

「じゃあ、こっちにどうぞ。」

「おう!」

ごく普通のビジネスホテルのシャワールーム。ボディソープとシャンプー&リンスが備えてある。

お湯のカランを開き、温度を合わせる。その人はバスタブの中でブルブルと小刻みに震えている。三月の半ば、ここは岩手県盛岡市。福岡県のその人にとっては寒いのは当たり前だ。もっとも私は慣れているが。

「寒い?」

「寒い・・・zzz寒くないの?」

「寒いね。でもシャワーあたってるから。」

「ずるーい。」

仕事柄、客にそういう思いをさせてはいけないのだが、その時はちょっといたずら心が働いた。というよりも、私がただじゃれ合いたかっただけだった。久しぶりに会った人間味のある人、その人とふれ合いたいだけだった。

「ふふっ。」

「なんだよ。」

予想通りの顔だ。ちょっとふてくされた顔もスラムダンクのあのキャラクターにそっくり。「普通の女の子に見える」、そう言った時のその人よりも、私にはこっちの方が気が楽でいい。

あの時のそれは単なる私の思いすごしかもしれない。それならそれでいい。