最後の春

不意をつかれた形になった男は地面に手をつき倒れ込んだ。すかさず長原が背中に乗り腕を抑える。

「何するんだ!」

男はそれぐらいしか言うことが出来ない

「何するんだ!じゃねぇだろ?力で抑えたところで得るものなんか何もねぇよ。男ならついて来てくれる男になれよ。あんた今すげぇカッコわるいぜ」

長原が呆れた様に諭す。

「良いこと言うじゃない長原ちゃん」

土田は感心したが裕にはすぐにある事に気付いた。

「どこのセリフ?」

裕が笑って聞くと

「昨日借りた映画から」

と笑い返した。裕が周りを見渡すと近隣の方らしき人がこちらを眺めている。

「人が見てる。途中から見てたらこれって俺たちがリンチしてるみたいじゃね?」

裕がそういうと長原は男から立ち上がった。