『ゴメン』

風が吹き抜ける。

『悪い』

何て言ったの?よく聞こえないよ?

『バイバイ』

純の優しい目が瞬きをして弓なりにしなる。

なんでいつもと変わらない顔をしているの?

『バイバイ、桜』

あたしの目は瞬きもしない。

伏せもしない、

いつもと変わらない、

無感覚な顔であなたの背中だけを見つめていた。


純が左手に持ったままの卒業証書を振る、その背中を。

ピンクの花びらが舞う中で。