「奈々美。」
オーディション会場だったビルを出たら、後ろから声をかけられた。
「ん?」
できる限りの笑顔で振り返れば、怪訝な表情を向けられる。
「お前、気持ち悪い。」
「はぁ?」
せっかく人が気を使って、返事したのになにそれ!
気持ち悪いって何!
女の子に言う?普通!
今ダメージ受けてて、復活できてないんだから。しょうがないでしょ。
すいませんね、気持ち悪くって!
まぁ、こんな些細なことにムキになってる私も私だけど。
なんて、ブツブツ呟いてると
「くくくっ。」
笑ってるし。
なんなんだ。
「そっちこそ、突然笑い出すとか。
気持ち悪い。」
「いや、悪ぃ悪ぃ。」
そう言いながらも、まだ笑ってる。
ふてくされて、下唇を出す。
「お前は、そのまんまでいーんだよ。」
「え?何が?」
「今回のは嫌だったろうけど。
審査員の人達はいい反応だったし。
アピールできたんじゃねーの?」
それは優斗もじゃんか。
わかってる。
今回のはしょうがないってわかってるよ。
でも、悔しい。
それが本音で。
「いーんだよ。」
見れば、優しい笑顔。
「相手の印象に残れば。」
その優しい笑みが、落ち着かせてくれる。
「帰んぞ。」
そう笑って、歩き出す。
私もその背中を追いかけた。
・・・あ。
私。
ちょっと、復活した。
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