とうとう恐れていた時が来てしまった。

今日は二人組になるらしい。



憂鬱すぎて、溜め息しか出てこないんですけど。



「んじゃ、よろしく。」



「・・・よろしく。」



ゆっくり座ると、優斗の視線に気が付いた。




「・・・何?」


「なんかあったんだろ。

元気なさすぎ。」



トクン・・・トクン・・・



まただ。

胸が苦しくなる。




こういう時、普通なら『あんたのせいだよ』なんてイラッとするんだろうけど。




悔しいことに、嬉しくなっちゃってる自分がいる。









「心配、してんの?」



「・・・・・・アホか。

演技に支障出てくると困るから言ってんだよ。

やりにくくなんだろ。


誰が心配するか。」






頭の中が真っ白になる。

金槌で殴られたような衝撃が走った。





胸が締め付けられて。

喉が痛くて。

鼻の奥がツーンとする。










泣いたらダメだ。

皆のやる気を壊しちゃう。

主演がこの空気を壊しちゃダメだ。


ここに、いちゃダメだ。





「・・・わかった。

そうだよねー。

やりにくいよねっ。



じゃあ、ちょっと先生に代わってもらうね。」






明るいフリをして、ゆっくり立ち上がる。


相手役の私がいなくなっていいわけがない。


そんなのはわかってる。


でも、今。

元気に振る舞い続けることはできない。


優斗がやりづらくなるのは目に見えてる。




・・・・・・私、主役失格だ。





「は?

おい、どこ行くんだよ。」







ばか。

呼び止めないでよ。


そんな心配そうな声出さないでよ。





「ちょっと、保健室行ってくるね。」




重い頬を無理矢理上げて。

先生に許可をもらい、教室を出た。