なんで、見ちゃったんだろう。
なんで、来ちゃったんだろう。
なんで、告白をためらってたんだろう。
バラを手渡しながら、顔をあげる優斗を見て我に返る。
そのまま、目が合う前に走った。
走って。
走って。
走って・・・。
ただひたすらに走った。
人混みの中に入って行き、廊下の向こう側の階段へ向かう。
急に熱気が襲って来て、思わず顔をしかめた。
息が乱れる。
汗が頬を伝う。
皆はそんな私には見向きもせずに、笑っていた。
楽しそうな姿は眩しくて。
寂しかったけど。
今の私を見ないこの空間は、なんだか心地よかった。
私がシンデレラだと気づいたのか。
振り返る人が増えてきたから、歩く速度を速める。
人混みの中を通り抜けて、
やっと階段までたどり着いた。
そのまま駆け上がる。
何も考えずに、ただひたすらに。
一番上まで来ると、他の階より人が少なかった。
息が乱れる。
ふと気づけば、足が震えていた。
走ったせいなのか。
それとも・・・・・・
壁に寄りかかって息を整える。
「はぁーーーーーー・・・・・・。」
深く、大きく、ため息をついてみた。
誰にも気づかれない、大きな大きなため息。
汗を拭って、そのまま座り込んだ。
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