「もう、行かなくては。」 あ、声が震える。 『ごめんなさい。もう、行かなくては。』って台詞なのに、言えなかった。 だって、ごめんなさい。って言ったら、涙が溢れそうだったから。 ガラスの靴を片方そっと脱ぎ、階段を降りる。 ガクンッ えっ? 片方だけヒールだからバランス崩さないように気を付けてと、何度も言われたのに。 どうやら階段を踏み外したみたい。 前のめりになる自分の体から、血の気が引いていくのがわかった。 ・・・やばい。 落ちる! .