ーーーキュッ





勢いをつけて出て来る、少し冷たい水。



ゆっくりとすくい頬に当てた。






「どうしよ。」






キス、しちゃった。




いくら事故とはいえ、私のファーストキスが・・・





しかも、優斗と・・・










きゃああああ!

さっきの出来事を鮮明に思い出して、また真っ赤になった。









ほてる頬を手で押さえながら、ゆっくりとドアを開けて外に出る。




「!」





そこには・・・








「嬉しかった?

優斗とキスできて。」




にっこりと微笑んでいる紳士。


だけど伝わってくるのは嫌な空気だけ。











なんで。


なんとか、誤魔化さなきゃ。






「キスなんか・・・」

「キスなんかしてないって言い切るんだ。

俺、後ろにいたんだよ?」




「嘘・・・。」








皆、客席側にいると思ってた。



なんで、そのことに気付かなかったんだろう。









「まあ、幸い後ろにいたのは俺だけなんだけどね。」



「・・・何が・・・言いたいの?」






完全に廊下に出た私は、遠くで聞こえる笑い声に耳を澄ませていた。




あんなに仲良かったはずの達哉君が、怖い。







「あいつは、あのまま動いたら皆にキスしたことがばれると思って離さなかったんだよ?」

「・・・っ。」

「それでも嬉しい?」