もう一人の先輩……
翔先輩は、頭脳明晰でその上、成績優秀な先輩。
それなのに、決して威張ったりせず、僕らに優しく接してくれた。
バスケは颯人先輩とほぼ並んでいるほどでそれなりに上手い。
翔先輩が僕らを見つめて言った。
「……このチームは、俺にとって最高で大好きな居場所だった。
…ありがとう……」
翔先輩に“ありがとう”と言われると、
本当にこっちがありがとうと言いたくなった。
それから翔先輩は、一礼だけをすると
元の場所に戻っていってしまった。
「……というわけなんだ…」
巧先輩が言った。
翔先輩の方の理由は、はっきりとはわからなかった。
けれど、巧先輩も言わないのだから
理由は難しいのだろうな…と僕は思った。
「次期キャプテンに立候補する者…」
巧先輩が言った瞬間、
無意識のうちに僕は手を挙げていた。
やりたくてもできなかった2年生の分まで、
僕がやってみせたい…!
「健だな?みんな、いいか?」
「「はい!!」」
パチパチパチパチ……
みんなが僕の立候補に応えてくれた。
僕は、ただそれが嬉しかった。
ふと、汐莉に目をやる。
汐莉は満面の笑顔で僕に拍手をしている。
汐莉、全国制覇するから…
見守っててくれるか…?
.



