◇◆Side.汐莉◆◇
「…お疲れ様でーす」
練習が終わると、ただいつもこの言葉の繰り返し。
「お疲れ様でーす
お疲れ様でーす」
あたしがひたすらこの言葉を言い続けていると
あたしのジャージの袖を誰かが引っ張った。
「ちょ…ちょっと、汐莉?」
声のする方向を見ると、同学年のマネージャーの里実(サトミ)が
あたしを不思議そうな顔で見ていた。
「あたし、変なことした?」
ちゃんと荷物は体育館から全部出したし…
部員に挨拶してたはずだし…
マネージャー日誌も書いたし…
じゃあ、あたし何したっけ?
「部員がいなくなっても挨拶してるんだもん、
ビックリしちゃったあ…」
?!
あたしは里実の一言に固まってしまった。
「なっ………///」
誰もいない廊下に向かって
ずっと挨拶しているところを想像したら
急に恥ずかしくなってきた。
これこそ、穴があったら入りたい状態だよ…///
「いや~…。
珍しいね?汐莉がボーッとしてるなんて…
明日、雪でも降るんじゃないの?」
「何それ!ひどーい…」
アハハハ、と二人で笑う。
でも、あんなの見たらボーッともするわな……。
あたしの脳裏にさっきの映像がかすめた。
健………。
どうして絢佳を抱き締めたの?
聞いたらまた“再開のハグ”って言って
ごまかすんだろうけどさ……?
あたし……
不安なんだよ?
どうすればいいのかな……?
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