ひまわり



久しぶりに包まれた健くんの腕の中は
とても温かくて不思議と心地よかった



「……健先輩…?」





筋肉質になった腕は、優しく強くあたしを包んでくれて、

少しだけ茶色がかった髪の毛は、
健くんの心の移り変わりを表しているようだった。





「………汐莉」





え?



…健くん…今なんて?






汐莉って言ったの?

あたしは………
あたしは………





「あたし……違います」



声が震える。

驚きと悲しみと嬉しさとが混ざりあった感情が溢れ出す。





「あたしはッ………」



一呼吸おいて





「あたしは絢佳ですッ…!!」








突き放された健くんは
今までに見たことないくらい驚いた顔をした。




健くんは今、何を思っていますか?





「汐莉先輩じゃないです……
 中原絢佳です、バスケ部の。そして…

 健先輩と汐莉先輩の幼なじみですよ?」





健くんはほんの少し、寂しげで悲しい顔をして
あたしを見つめた。






「思い出してもらえましたか…?」





ごめんね、健くん…


あたしは“汐莉”じゃなくて、
“絢佳”なんです。




あたしは“汐莉”と呼ばれたことが
存在を否定されたみたいで
とても切なくて悲しかった。






「健先輩……?」



あたしが訊ねると、健くんはあたしの頭をクシャクシャと撫でた。



あたしは…笑えてましたか?





あなたを傷つけずに笑うことが
できていましたか?






そして………
あたしはあなたの中で“絢佳”でしたか?








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