「絢佳、着いたわよ?」
ボーッとしていたあたしはお母さんの声で現実に引き戻される。
言われるがままに車から降りて、校舎に向かって歩く。
「お母さん、職員室に行ってくるから体育館行ってなさい?」
当たり前だよ?
あたしは体育館に来るために来たようなものだしね^^
「うん」
「後で迎えに行くからね」
お母さんは職員室に、あたしは体育館に向かう。
体育館に近付くと声出しが聞こえてきた。
ドアの隙間から中を覗いてみると、バスケ部がオールコートで使っていた。
恐る恐るドアを開けて、中に入ってみる。
カニ歩きで壁に添いながら横っちょに行く。
すると
「あれ、中学生?」
男の先輩に声をかけられた。
その瞬間にあたしの心臓はドッキーンと跳ね上がり、
今にも口から出そうになった。
驚きのあまり、泥棒が警察に見つかったような感じになり
「えっ、あっ…あの……」
ついには話し方までもが可笑しくなった。
「中原って……もしかして彰人(アキト)の妹?」
彰人はお兄ちゃんの名前。
「お、お兄ちゃん…知ってるんですか?」
「うん、だってバスケ部だし」
あ、そっか……。
一人で納得する。
「妹ちゃん、名前は?」
「…ふえ?あ、絢佳です」
「可愛いね~絢佳ちゃん^^
彰人なら向こうにいるよ?」
「あ、いや……」
健くんを捜してるんです、なんて言えるはずもなく。
「あき…「や…違うんです!」
叫ばれる前になんとか止めることができて一安心
……も、つかの間。
「もしかして…アイツ?」
男の先輩が指差した方向には
………健くんがいた。
何も言わなくてもバレてしまっていたのである。
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