あたしと健くんが
“先輩後輩”の関係になったあの日から早一年。
健くんは桜舞う日に中学を卒業して
汐莉ちゃんと共に朝日ヶ丘高校に入学した。
「よし、これで完璧^^」
鏡の中の自分にニコっと笑いかけて、あたしは自分の部屋を出た。
今日は健くんのいる朝日ヶ丘高校にお兄ちゃんの用事で行く。
あたしのお兄ちゃんは朝日ヶ丘高校でバスケ部。
(決して上手くはないが#6)
「絢佳、行くわよ?」
昔より少しシワの増えた、
優しげな表情のお母さんがドアの隙間から顔を覗かせた。
はーい、と返事をしてお母さんと朝日ヶ丘高校に向かう。
あたしは正直、健くんと汐莉ちゃんに会うのが怖かった。
あの日から何日か過ぎた時、あたしは健くんの彼女さんを知った。
それは……
汐莉ちゃんだった。
どうしても素直に喜んであげれなかった
だってあまりにも、二人がお似合いすぎたから……
汐莉ちゃんが完璧すぎたから……
認めるしかなかったから……
恋を知らなかったあたしに、この現実は酷だった。
世の中に溢れているラブストーリーは大抵、良い話で終わることが多い。
中では、片方が病気や事故などで亡くなってしまっても思い出を胸に
片方が生きていく話もあったりする。
だけど、叶わずに終わるラブストーリーなんて聞いたことがない。
だからあたしは、恋をすれば絶対叶うと思っていた。
そんな儚い思いは、現実問題通用しない。
自分の好きな人には彼女さんがいて、
その彼女さんは自分もよく知っている人で。
あまりに二人がお似合いだなんて、あまり聞いたことがない。
でも……
“二人が幸せなら、あたしも幸せ”
なんてお人好しなことは言えないけれど
それでもあたしは二人が好きだから。
心から応援したいって、思うんだ
.



